先月17日に肺炎で死去した内田裕也さん(享年79)のお別れの会「内田裕也 Rock’n Roll葬」が3日、東京・青山葬儀所で営まれた。

喪主を務めた長女のエッセイスト内田也哉子(43)が謝辞を述べた。

全文は次の通り。

私は正直、父をあまりよく知りません。わかり得ないという言葉の方が正確かもしれません。

けれどそれは、ここまで共に過ごした時間の合計が、数週間にも満たないからというだけではなく、生前母が口にしたように、こんなに分かりにくくて、こんなに分かりやすい人はいない。

世の中の矛盾を全て表しているのが内田裕也ということが根本にあるように思います。

私の知りうる裕也は、いつ噴火するか分からない火山であり、それと同時に溶岩の間で物ともせずに咲いた野花のように、すがすがしく無垢(むく)な存在でもありました。

率直に言えば、父が息を引き取り、冷たくなり、棺に入れられ、熱い炎で焼かれ、ひからびた骨と化してもなお、私の心は、涙でにじむことさえ戸惑っていました。

きっと実感のない父と娘の物語が、始まりにも気付かないうちに幕を閉じたからでしょう。

けれども今日、この瞬間、目の前に広がるこの光景は、私にとっては単なるセレモニーではありません。裕也を見届けようと集まられたおひとりおひとりが持つ父との交感の真実が、目に見えぬ巨大な気配と化し、この会場を埋め尽くし、ほとばしっています。

父親という概念には到底おさまりきれなかった内田裕也という人間が、叫び、交わり、かみつき、歓喜し、転び、沈黙し、また転がり続けた震動を皆さんは確かに感じとっていた。これ以上、お前は何が知りたいんだ。きっと、父はそう言うでしょう。

そして自問します。私が父から教わったことは何だったのか。それは多分、大げさに言えば、生きとし生けるものへの畏敬の念かもしれません。

彼は破天荒で、時に手に負えない人だったけど、ズルい奴ではなかったこと。地位も名誉もないけれど、どんな嵐の中でも駆けつけてくれる友だけはいる。これ以上、生きる上で何を望むんだ。そう聞こえています。

母は晩年、自分は妻として名ばかりで、夫に何もしてこなかったと申し訳なさそうにつぶやくことがありました。「こんな自分に捕まっちゃったばかりに」と遠い目をして言うのです。

そして、半世紀近い婚姻関係の中、おりおりに入れ替わる父の恋人たちに、あらゆる形で感謝をしてきました。私はそんなきれい事を言う母が嫌いでしたが、彼女はとんでもなく本気でした。まるで、はなから夫は自分のもの、という概念がなかったかのように。

もちろん人は生まれ持って誰のものではなく個人です。歴(れっき)とした世間の道理は承知していても、何かの縁で出会い、夫婦の取り決めを交わしただけで、互いの一切合切の責任を取り合うというのも、どこか腑(ふ)に落ちません。

けれでも、真実は母がそのあり方を自由意思で選んでいたのです。そして父も、1人の女性にとらわれず心身共に自由な独立を選んだのです。

2人を取り巻く周囲に、これまで多大な迷惑をかけたことを謝罪しつつ、今更ですが、このある種のカオスを私は受け入れることにしました。

まるで蜃気楼(しんきろう)のように、でも確かに存在した2人。私という2人の証がここに立ち、また2人の遺伝子は次の時代へと流転していく。この自然の摂理に包まれたカオスも、なかなかおもしろいものです。

79年という長い間、父が本当にお世話になりました。最後は、彼らしく送りたいと思います。

Fuckin’ Yuya Uchida,

don’t rest in peace

just Rock’nRoll!!


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ネットの反応

1.
逞しい2つの魂が次の世代に残した結晶は
また力強く光を放っているのですね
也哉子さんの娘としての思い、公正さ、素晴らしいです
どうかご家族末永く仲良くいてください
2.
そうですね、ズルイ人ではない。それはわかる気がする。
お母様は本当に愛してらっしゃったんですね。それも娘さんにとっては戸惑う事も多々あって苦しんだ事もあったでしょう。

大事な娘家族に負担にならないように、私が片付けるからと言って亡くなった樹木希林さん。本当にその通り、すぐに連れて行ってしまった。内縁の方がいらっしゃっても、この二人はちゃんと夫婦だったのだと実感しました。

3.
小説があるなら読んでみたい…。
綺麗な文章。
4.
まあ、この娘の気持ちは他の誰も分からないだろう、と娘は思って書いた文章。死んで初めて両親と呼べるようになった、実感だけが伝わってくる
5.
純文学の香りがするような素敵な文章ですね。
この方の文章をもっと読んでみたいと思いました。
小説書いてくれないかしら。
こういう文を書ける人がまだ
この日本にいたんだと感動しています。
なんか的外れな感想ですが、
素晴らしい娘さんだし、それを見抜いた
モックンも見る目があるんだなと感心しました。
6.
とても素晴らしい謝辞。
しかし記事にある「けれでも」は「けれども」の間違いでは?
7.
也哉子さんを妻に選んだもっくんの感性に驚きました。本当にすてきな女性ですね。彼女の謝辞には、胸うたれ感動しました。お父様、お母様のご冥福、心からお祈りいたします。
8.
也哉子さんのスピーチは樹木希林さんの時もそうだったけど、凄く引き込まれる。最後までつい聞いてしまう魅力がありますね。
9.
すばらしい文才。頭がとても良い方だと思います。この人の作品を読んでみたいとおもいました
10.
也哉子さんは 静寂ながら感性の塊のよう…
御両親は 視覚で 次は何をするのだろう?
と思わせる人だったけど
也哉子さんは 次はどんな言葉を選ぶのだろう?
って 言葉を期待してしまう
凄い文才だ!
11.
素晴らしい。
美しい文章。

涙が出ました。

12.
素晴らしい文章でした。感動しました。
13.
結婚当時、19歳とは思えぬ大人で知的でこの人とと思ったと本木さんは言われてますよ。
14.
親は無くとも子は育つ。きっとユウヤさんも喜んでると思いますよ。
15.
泣けるじゃねぇか


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16.
樹木希林さんの時も思ったけど素晴らしい弔辞。複雑な感情。優しさ…沢山の素直な気持ちが入っている。よい娘さんがいて良かったね。
17.
父と母を、この短期間で亡くしてしまうのは
辛いことだろう。。

父との生活が短くても(私自身、学生時代から父と生活を共にした記憶がない。)

やはり血のつながりのある「父」は
離れていてもその人、ただ一人なのである。

(たまにふと、『家族が揃うことはないのだろう…』と考えることもある。)

当たり前に実家があり、家族がいる場所がある人をたまに羨ましく思うこともあるが、

年齢も年齢なので、それに関しては特に仕方ないことだとは思っている。

子供時代は母親の方がいないと辛いが
父親が不在でもそこまで寂しくなかったように思える。

どちらかといえば、30代に入った辺りから、過去を考えることのほうが増えたかのように思える。

それだけ親の死にゆく年齢が
近づいてきているからかもしれない。
(祖父母ももういない。)

18.
…この文章力。
やはり内田裕也も樹木希林もタダモノじゃなかったんだ。だから娘にこんなにすごいDNAを残せたんだと思わざるを得ない。
19.
先ほどニュースで全文を也哉子さんが読んでるのを見ましたが、唸りましたね。

素晴らしいです!こんな文章をしたためるのも素晴らしいし、朗読と言っていいのか、、、読まれる間や声、淡々となのに感じとれる抑揚。
それにひしひしと伝わる愛憎の気持ち。

この人が表に出て来たら同じ年代の女優さんより、もっと凄みのある素晴らしい女優さんになっていたと思います!勿体ない!!!
流石はあのお二人の娘さんだと!

しかし、、、本木さんも言ってましたが、本当に樹木希林さんがきっちり連れて行ったんだなー。と。
夫婦の形はほんと人それぞれですね。

ご両親のご冥福をお祈り致します。

20.
也哉子さんてなんかすげーな
21.
素晴らしい文章ですね。
エッセイストとしての、也哉子さんの作品を読みたくなりました。
希林さんと、裕也さんをきちんと送られて、お二人も誇らしく思われているでしょうね。
22.
序文から引き込まれる表現豊かな弔辞、でも最後はロックらしく締めて、なんて文才ある方なんだ。

老成せざるを得なかった特殊な環境にはあったけど、一年で親二人を見送らなければならなかったけど、也哉子さんの傍らにはモッくんがいて、お子さんがいて。そこだけは、安心できる。

23.
最後のf wordは

だっさいの突き抜けて 最高のカッコいい裕也

って意味だよね。

ちょっと ローリングストーンズっぽい。

24.
前から個人的にいけすかない。
25.
父親との関係が良くわかる文章ですね
26.
最後は”クソッタレ ユウヤ”か。オレも親父が死んだらそう言おう。
27.
すばらしい文才ですね。
これまでのいろんな葛藤や愛や憎しみや悲しみが織り混ざって極上のシルクのように滑らかな素敵な文章だと思いました。
ここまでのご苦労を想像すると心が痛みます。
28.
しっかりとした 娘さんですね

良いところを 受け継いでると思う

29.
也哉子さんて方はなんて言葉を紡ぎ、また知りつくしてるんだと思いました。
そして、本木さんもほんとに思慮深い。

二人は、ある種、反面教師のこのご夫婦を俯瞰的にまた憧れとしてみていたのかも知れませんね。
ただ、娘にこういう弔辞をさせる父親って誉められたものでもありませんがね。

希林さんのときの弔辞でも感じていましたが…
当人たちは、不思議な夫婦関係だけども、二人の遺伝子と生きざまは、モックンと也哉子ご夫妻に刻まれているのかなと。。

49日が終われば、一息つくでしょう。
その一息ついたところで改めて、希林さんと、内田さんの事を振り返るのも、娘だけの特権なので、存分に堪能して、エッセイストとしての糧にして頂きたいです。
これからの益々のご活躍を期待しております。

30.
親娘じゃないか?


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