中国ハルビンで農業を営んでいたスンさん(35)は今年2月、平昌(ピョンチャン)冬季オリンピック(五輪)の観光客としてソウルの地を踏んだ。だが、スンさんは冬季五輪が開かれる平昌の近くには行きもせず、
ブローカーから教えられた京畿道(キョンギド)のあるアパート建設現場の宿舎に直行した。現在まで9カ月間不法滞在しながら建設現場の日雇い労働者として働いている。
スンさんは「仁川(インチョン)空港から1台のバスに20人乗ったが、全く同じ目的だった」とし「韓国入国と就職の対価として5万人民元(約83万円)をブローカーに支払った」と話した。
スンさんが先月23日間を働いて得た収入は約300万ウォン(約30万円)。中国で1年間の農作業で得ていた1万元(約17万円)の倍に近い。
韓国政府は平昌五輪のチケット購入などの日程要件を満たした中国人に限ってノービザ入国を許容した。
2016年高高度ミサイル防衛(THAAD)体系配備以降、限韓令によって減少した中国人団体観光客を誘致し、五輪チケットの販売を増やすための多目的カードだった。
法務部によると、2~3月の平昌冬季五輪とパラリンピック期間にノービザ入国制度を通じて訪韓した中国人は3万4062人。このうち5887人がスンさんのように中国に戻らないで不法滞在中であることが確認された。
政府は五輪ノービザ入国が中国人観光客の増加の呼び水になることを期待したが、これもまた望みどおりにはならなかった。
今年(1~8月)の訪韓中国人観光客は305万人で、限韓令以前の2016年同期(560万人)の54%にとどまっている。韓国旅行業協会のヤン・ムスン会長は
「中国当局が上海など6市・省に対して限韓令を緩和するなど柔軟ジェスチャーを取っている」とし「だが、今年、韓国旅行会社が誘致した団体観光客は8万9000人で、限韓令前だった2016年の245万人と比較すると非常に少ない」と語った。
中国以外の海外観光客市場も思わしくない。今年(1~8月)全体外国人観光客は986万人で、中国人観光客が大幅に減った昨年(886万人)よりは増えたものの、2016年の1147万人には及んでいない。
中国人観光客が減り、中国専門担当旅行会社はもちろん、免税店やホテル経営も泣きっ面だ。韓国ホテル業協会によると
、今年7月、ソウル・京畿(キョンギ)・仁川(インチョン)・釜山(プサン)・済州(チェジュ)の200カ所のホテルの外国人比率は48%で、2年前の同じ時期に比べて5.4%ポイント減少した。市内免税店は代工(代行購入者)の天地となった。
韓国化粧品などを大量購入していく代工に頼って売上は増えたものの、各種手数料を支給しているため、むしろ営業利益は減っている。
専門家は画期的な観光活性化対策が必要だと指摘する。漢陽大学観光学部のイ・ヨンテク教授は「日本も我々と同じように中国との摩擦があるが、
日本を訪れる中国人は増加している。結局、我々と日本は観光コンテンツに差があるという点を認め、中長期的な観点から観光政策を考え直さなくてはならない」と述べた。
引用元: https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181004-00000003-cnippou-kr
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