今日、戦力外通告を受ける。
そのことは、昨日の電話で既に知っている。朝、いつもと同じように起き、同じ道を通って球場に向かう。いつもと違うのは、スーツを着ているということ。ただ、それだけである。
それだけなのに、この気持ちはなんだろう。
長い野球人生だった。小学校3年生のときに半ばやらされて始めた野球は、いつのまにか人生の中心にあった。試合に勝つこと、仲間と協力すること、思い通りにならないこと、
そして、自分自身を高めること。人生において大切なことは全て、野球から教わった。“プロ野球”という一つの完成されたフィクションに、人生の全てを注ぎこんできた。それが、今まさに終わろうとしている。
「どんな気持ちになるのかな」
情熱の全てを注ぎこんできたものが終わる時、自分自身は正気でいられるだろうか? 取り乱したりしないだろうか? どこか他人事のようにそんなことを考えていた。
抜けるような高い空に、風が吹き抜けていく。金木犀の香りが濃く香る日だった。横須賀港に停泊している軍艦は、今日も波に揺られてギシギシと音を鳴らしている。グラウンドでは、“来年”に向けて選手たちが練習を始めていた。それは、昨日までと変わらない、いつもの光景だった。
「今後、どうする?」
「おはよう。そこに座ってくれ」そう声をかけてくれた高田GMの横には、2人の球団職員が座っていた。寮の応接室の椅子に腰をかける。寮に4年間住んでいたが、この部屋に入るのは何回目だろうか。
「高森な、6年間見てきたけど、成績も思わしくないしな。来年は、球団としては契約をしないことになった」
何の話をされるかは分かっていた。それでも、妙に脈が速く、呼吸は浅い。
「はい。6年間お世話になりました」
何かを考えて答えたのではない。用意していた言葉をそのまま口から吐き出しただけである。
「今後、どうする?」
間髪入れずに、次の質問へと移る。戦力外通告を言い渡す仕事など、誰もやりたくはない。向こうも向こうで、それなりの緊張はあるのだろう。
引用元: https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190202-00000017-zdn_mkt-bus_all
ネットの反応
プロとしての結果は出せなかったかもしれないが、人生において役立つことを学んだのではないかな。あの時があったから今があると言えるようになりそう。
大抵5Pもある記事は2P半ばで大半が無意味で下手くそな作文で読む気が失せるのにこの人の記事は最後まで読んでしまった
他の人が書いているように伝える才能というのがあるのかもしれない
人に読ませる文章を書く、書けると言うのは素晴らしい事だと思う
下手くそな作文記事が溢れる中いい記事でした、ありがとうございます
記事では触れられてないが当時は長打を期待されてたバッターだから
横浜高校のスターかつパワーヒッターだった筒香の入団は彼にとってはとんでもない衝撃だったのは想像がつく
そこで不貞腐れてしまったことが高森にとっての後悔だったんだろうなあ
結果は残せなかったかもしれないけど後輩やこれからプロ野球選手になる人達にとっては金言で素晴らしい記事だと思います。
これからの人生頑張ってください。
素晴らしいね。文章も、内容も。
そこらの職業記者が書く、読むに値しない駄文やくだらない内容の記事に比べたら何十倍も読み応えがあると思う。
この選手の事はよく知らないけど、これだけの人生経験プラス文才が あれば、スポーツライターとして今後十分通用していけるのではなかろうか。
第二の人生を是非応援したい。
野球のフィクション小説を一本書いて頂きたいと思えるくらい読み応えのある記事でした。
高森の書く文章は、その時々の情景が野球経験のない自分にもまるでその場に居るかの様な錯覚をおこす。
一気に読んだ。
試合に出られない選手の件は
特にいい文章だと思う。
そういう世界とわかって足を踏み入れたんだからねぇ
これはいいテキスト。
グッと来たよ。
プロ野球選手になることは東大に入るより難しい。
もうちょっとリスペクトして、見ていこうと思う。
人は不振の時、不調の時に本質が見える…
言葉は理解できても、私の場合つい不貞腐れたり、他人への妬みで一杯になってしまいます。
隠したい感情や弱い部分も、自分と冷静に向き合い簡潔的確に表現している。
良記事ありがとうございます。
すばらしく読み応えのある文章でした。涙が出てしまいました。
この高森という選手を自分は知らないが、素晴らしい文章だと
本音や実際に起こった事を文章として紡ぎあげた文章であると感じた
プロ野球だけ、プロスポーツという厳しい世界だけの話ではないのだと思う
いい文章を読めて感謝
久しぶりに、読んで良かったと思える記事でした。
感動した。
シリーズ連載希望
良い文章だと素直に思う。野球の才能は開花しきれなかったかも知れないけど、プロ野球の世界の中に身を置いて六年間過ごした貴重な経験から得た知見をぜひもっと伝えて欲しい。
野球好きかどうかに関わらず、若い人に読んで欲しい文章。
高森は良い文書くね
プロ野球の世界とそこでしのぎを削る様子がとてもよくわかる。この文章を読めて良かった。
文章能力高いですね。
どこぞのライターよりも、いい文書きますね。
心象がよく伝わりました。
読売の岡崎監督に声をかけてもらったエピソードが好き
岡崎さんは立派な指導者、教育者だ
高森には野球では難しかったかもしれないが、文才があったね。
いつも良い文章をありがとう。
誰だよw
ベイファンとしては、佐伯さんのくだりは涙なくして読めなかった。
高森は本当に伝える才能がある。
この文章は、まずプロ野球選手を目指している全ての人に読んでほしい。とても大事な事が書いてある。
そしてプロ野球にあまり興味のない、高森のことなど全く知らないという人にも出来れば目を通して欲しい。必ず何か得られるものがある。
不振の時に本質が見える……野球だけの話じゃないのかもしれん
高森だろうと思ったら高森だった
ほんと読ませる文章書くわ、この人