【ソウル=桜井紀雄】米朝交渉では、朝鮮戦争の終戦宣言を迫る北朝鮮から米側がどれだけ非核化の具体的措置を引き出せるかが焦点とみられてきた。
だが、ポンペオ米国務長官の7日の訪朝を前に、北朝鮮は非核化のハードルを引き上げる牽制(けんせい)に動いている。
仲介役として終戦宣言を軸に非核化を導き出すという韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領の戦略にもほころびが生じ始めた。
「米専門家から、米国が終戦宣言の代価として北朝鮮から核計画の申告や検証、寧辺(ニョンビョン)核施設の廃棄などを得るべきだという荒唐無稽な詭弁(きべん)が上がっている」
朝鮮中央通信は2日、論評でこう指摘。終戦は半世紀前には解決されていてしかるべき問題で「非核化措置の駆け引き材料ではない」とクギを刺した。
米国の「相応の措置」を前提に廃棄に言及した寧辺核施設は「核計画の心臓部」だとも強調し、出し渋る姿勢をにじませた。
終戦宣言は初歩的信頼醸成措置であり、核施設廃棄にはプラスアルファが必要だと交渉条件をつり上げた形だ。
北朝鮮の李容浩(リ・ヨンホ)外相は先月末、国連総会で「米国への信頼なしに一方的核武装の解除は絶対あり得ない」と主張。「制裁が不信感を増幅させている」ともしており、
ポンペオ氏との協議で北朝鮮側が信頼の証しとして制裁緩和を迫る可能性がある。李氏はこうも述べた。「当事者が米国ではなく、南朝鮮(韓国)だったら、非核化問題も膠着(こうちゃく)状態に陥ることはなかった」
韓国の康京和(カン・ギョンファ)外相は1日、国会で「米国が相応の措置を取り、北が安心して非核化に取り組めるようにすべきだ」と力説した。
文氏は先月下旬の訪米中、終戦宣言の必要性を説いて回り、米メディアから金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の「首席報道官」と揶揄(やゆ)された。
文氏は「終戦宣言は政治的宣言で、いつでも取り消しが可能だ」とも説明した。だが、ハリス駐韓米国大使が「一度宣言してしまうと、新たに戦争を始めない限り引き返せない」と言及した通り、
米韓合同軍事演習の中断とは異なり、本来、不可逆的であるからこそ南北が終戦宣言にこだわってきたはずだ。文氏は年内の宣言実現に前のめりになるあまり、矛盾が露呈したと言わざるを得ない。
北朝鮮は韓国との合意を盾に、無条件の終戦宣言を求める一方、具体的非核化措置を引き延ばしたまま、2度目の米朝首脳会談に向けた主導権を握ろうとする狙いも浮かぶ。
引用元: https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181004-00000518-san-kr
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