【北京=藤本欣也】香港当局に査証(ビザ)の更新を拒否されていた英紙フィナンシャル・タイムズ記者が12日、香港を離れたもようだ。一国二制度のもと、言論・報道の自由が認められた香港から記者が事実上追放されるのは初めて。
香港で加速する“中国化”とともに、言論・報道の自由が脅かされている中国の現状を浮き彫りにした形だ。
ビザ更新を拒否されたのは同紙アジアニュースの編集者、ビクター・マレット氏。通算7年以上、香港で勤務してきた同氏はツイッターを通じて12日、香港を離れたことを示唆した。
香港の外国人記者クラブ(FCC)の副会長も務めていたマレット氏は9月にビザ更新を申請したものの、何の理由も示されないまま拒否され、14日までの香港退去を迫られていた。
今回の問題が大きな注目を集めたのは、「香港が21年前に中国に返還されて以降、このような扱いを受けた外国人記者は初めて」(香港英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト)だったためだ。
香港では本来、返還から50年後の2047年までは言論、報道、表現、結社などの自由を享受できる。それが金融国際都市・香港を支える一国二制度だ。
その原則を覆すような今回のビザ更新拒否について、香港トップの林鄭月娥(りんていげつが)行政長官は「出入境政策の個別の決定に関し、理由を開示しないのが通例だ」と主張、説明を拒んでいる。
しかしマレット氏が副会長を務めたFCCをめぐっては、今年8月、香港独立を主張する政治団体代表の講演を主催し、中国政府や香港政府が強く反発した経緯がある。
講演で司会をしたのが同氏だった。「中国政府にレッドラインを越えたとみなされ、香港政府がその意向に従ったのだろう」(香港民主派メンバー)との見方が強い。
中国本土では、中国当局がビザの発給・更新を拒否することによって、外国メディアに圧力をかけようとするケースは珍しくない。
12年には、温家宝前首相の親族の不正蓄財疑惑を報じた米紙ニューヨーク・タイムズの中国駐在記者がビザ更新を拒否された。
今年8月には、新疆(しんきょう)ウイグル自治区の人権問題を報じてきた米ネットメディアの記者がビザ発給を拒否されている。産経新聞記者も6月、日本記者クラブ主催のチベット自治区取材団への参加を拒絶されるなどしている。
北京駐在の特派員らで組織する「駐華外国記者協会」は今回の問題についてコメントを発表し、「ビザの拒否は事実上の記者追放だ」としてFCCへの連帯を表明、習近平政権による外国メディアへの圧力拡大に懸念を示した。
引用元: https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181012-00000628-san-cn
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