米動物園で15日、雌ライオンが同じ囲いで生活していた雄ライオンを殺した。2頭の間には子ライオン3頭が生まれていた。この出来事について専門家は、衝撃的で前例がないと述べている。
2頭は米中西部インディアナ州のインディアナポリス動物園で飼われていた。同じ囲いで8年間生活していたという。
動物園によると、先週の攻撃まで、2頭の間に目立った敵対行動は一度もなかった。
何が攻撃の原因となったのか。BBCはライオン研究者に意見を求めた。
何が起こったのか12歳の雌ライオン、ズーリが15日、10歳の雄ライオン、ナイヤックを攻撃した。職員は2頭を引き離せなかった。ナイヤックは窒息死したが、ズーリにけがはなかった。
動物園は「徹底的な調査」を進めているとしている。
性格の不一致? 米ミネソタ大学ライオン研究センター長のクレイグ・パッカー教授はBBCに対し、この種の攻撃は「前例がない」と話した。
「雄が雌を殺したり、雌の群れが雄を追い払ったりした例は見たことがあるが、雌1頭が雄1頭を殺す? 聞いたことがない」
パッカー氏はライオンそれぞれの性格が、殺害につながったのではと疑っている。
野生では、雄ライオンが雌を「完全に支配」している。一方のナイヤックは人間の手で育てられており、そのことがナイヤックを野生の雄より攻撃に弱くした可能性が高いと、パッカー教授は話した。対照的に、ズーリは典型的な雌よりも支配的な性格だった。
ズーリの体重は約147キロで、ナイヤックより約11キロ軽いだけだ。米サンディエゴ動物園によると、典型的な雄ライオンの体重は約150キロから約260キロ、雌ライオンは約120キロから約180キロという。
パッカー教授は、「もし攻撃が性格の不一致によるものなら、他の囲いについても、危険要因として検討するべきかもしれない」と述べた。
パッカー氏はまた、ズーリがナイヤックを2度も攻撃したことが、なおさら不可解だと指摘する。ナイヤックは1度は逃げたにもかかわらず、服従の態度を見せながら戻った。するとズーリが再び攻撃したのだ。
「同様の事例をいくつか見ないと、何が攻撃の引き金になったのか説明しようがない」と同氏は話した。
ライオンにとって異例な行動か
野生ネコ科動物保護団体「パンセラ」のポール・ファンストン南アフリカ地域担当ディレクターも、今回の件は意外だとパッカー氏に同意する。
野生では、主として子ライオンや縄張りを守るために雌ライオンの群れが雄を攻撃することはあり、そのような出来事は自然動物園でも撮影されている。しかしファンストン氏は、死に至った例は見たことがないと話した。
雌ライオンの群れと生活する1頭だけの雄になるため、雄ライオンが成長した雄の子を追い払うことも、野生では良くある。雄ライオンが子ライオンを殺すことも時々ある。これは多くの場合、別の群れから縄張りを新しく引き継いだ際に、雄が雌たちに自分の権利を主張するためという。
雄ライオンは雌に対し敵対行動を示すことでも知られる。交尾を拒否した雌を殺すこともあるという。
ファンストン氏は、ズーリがナイヤックを恐れたのかしれないと可能性を提案する。動物園によると、ズーリは「用心深く、子供を守ろうという気持ちが強い母親」だったという。
子供たちを守ろうとするあまり雄のナイヤックを怖がるようになったズーリが、野生本能に任せて、ナイヤックを殺すに至ったのかもしれないという。
「動物が落ち着いている、あるいは落ち着いて見えたとしても、そこに潜在的な緊張関係がないとは限らない」
米シカゴ・フィールド自然史博物館のブルース・パターソン研究員は、野生の雌ライオンが自分を怒らせた雄ライオンを攻撃し、けがをさせた例を知っているという。「(しかし)動物園の件とは異なり、のどを本気で攻めた雌はいなかった!」。
ライオンを25年研究しているファンストン氏は、今回の攻撃が「普通でなく」「珍しい」出来事だと認める。しかし、あながちおかしいとも言えないともいう。
「典型的な例を見ているからと、全てを承知したと我々は思いがちだ。しかしライオンは、社会的な関係性が極めて複雑な種だ」
「ライオンで大好きな点のひとつだ」とファンストン氏は付け加えた。「特定の状況で何が起こるか、予想しきれない。だからライオン観察は本当に面白いし、守り、保全したいと思う」
(英語記事 Why did this lioness kill the father of her cubs? )
引用元:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181023-45948460-bbc-int
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