銀座、新橋、築地――。その中間くらいのところに、ちょっと気になるビルがある。立方体の箱が積まれていて、丸い窓がたくさん並んでいる。そんな不思議な形状のビルを目にしたことがある人も多いかもしれない。その名は「中銀(なかぎん)カプセルタワービル」だ。

「そんな建物は知らないよ。見たことも聞いたこともない」という人に、簡単に説明しよう。近未来を感じさせられるデザインは建築家の黒川紀章さんが手掛けていて、カプセルは取り外しが可能である。世界初のカプセル型マンションができたのは、1972年のこと。

冬季オリンピックが札幌で開かれたり、オセロが発売されたり、刑事ドラマ『太陽のほえろ!』が放送されたり。そんな年に、このビルはにょきにょき完成したのである。

建物は地上13階建てと11階建ての2棟からなっていて、3階以上に140個のカプセルがある。部屋の広さは4.5畳で、その中にユニットバスが備えられているが、キッチンはない。46年前に建てられたにもかかわらず、一度も大規模修繕工事を行っていないので、お世辞にも「キレイ」とは言えない。

ところどころ老朽化が進んでいて、廊下の壁がはがれていたり、雨漏りがしていたり、お湯が出なかったり。しかも、10年ほど前から取り壊しの話が持ち上がっているのに、不思議なことがひとつある。

この建物を求めて、人が殺到しているのである。「物件を買いたい」「部屋を借りたい」「見学ツアーに参加したい」という人がたくさんいるのだ。

部屋は狭くて、古くて、使い勝手が悪い。そんな条件が並んでいたら、「ちょっと、無理。住めない」となるはずなのに、なぜ人が集まるのか。

その秘密について、中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクトで代表を務めている前田達之さんに話を聞いた。聞き手は、ITmedia ビジネスオンラインの土肥義則。

「サラリーマンのために」建てられた

土肥: 首都高を運転していると、このビルって目立ちますよね。立方体の箱がいくつも積み上がっていて、丸い窓がたくさん並んでいる。外観を見るだけで「この建物はただ者じゃないな」と感じるわけですが、こうしてナカに入ってみるとやはりフツーではない。

部屋には、造り付けの家具が設置されていて、そこに家電が組み込まれていますよね。テレビ、ラジオ、電話、時計のほかに、オープンリールデッキ(リールに巻きつけただけで、カセットに入れていない磁気テープ)まである。

扉を開けると、ユニットバスがある。いわゆるワンルームマンションのような形ですが、大きな違いはキッチンがないことと、丸い窓が開かないこと。

46年前に完成したとは思えないほど斬新なデザインがあちらこちらで楽しむことができますが、当時はどういったコンセプトで建てられたのでしょうか?

前田: もともとこのビルは「サラリーマンのために」建てられました。いまは「働き方改革」が叫ばれていて、労働時間を減らして効率的に働くことはいいことだ、といった雰囲気が漂っていますが、当時は違う。朝早くから夜遅くまで働いて、家には帰らない。

残業はこの部屋に持ち込む。こうしたライフスタイルに憧れた人たちが、この物件に魅力を感じていたのではないでしょうか。

そうした層をターゲットにしていたので、部屋にはキッチンがありませんし、洗濯機の置き場もない。なぜなら食事は外で済ませて、洗濯はコンシュルジュに頼むことができたから。

土肥: 洗濯物をコンシュルジュに預けるって、なんだか抵抗感があるなあ。

前田: 当時、このビルにはさまざまな人が働いていました。管理人、ルームキーパー、エンジニアなどのほかに「カプセルレディ」と呼ばれる人もいました。

土肥: カプセルレディ? ネーミングが気になりますが、どんなことをしていたのですか?

前田: タイプライターで書類を作成したり、英語を翻訳したり、コピーをとったり。カプセルで暮らす人たちのビジネスをサポートするレディが常駐していました。


スポンサーリンク


ネットの反応

1.
日本人ってこういう古いものに愛着を湧かすよね。良い面でもあり悪い面でもあると思う。
2.
住みやすさとはまた別の観点からの建物とという感じ
若い人には新鮮なんだろうか
内部の写真を見たが古い昭和の塊で昔自分の家にあったものを思い出す
軍艦島の廃屋みたいな印象
3.
これ、もはや文化遺産。
4.
昔、500万位で売りに出ていたので、買おうと思ったときがあるのですが、アスベストの説明で断念しました。立地がよいので利益が出るとは思いましたが、勇気がありませんでした。建物は難しいですよね。
5.
自分も、一度泊まってみたいと思っている。
けど、とまったら「住みたい」とはならないだろうね。
6.
銀座の一等地に住んでいながら毎日銭湯に通うって今なら趣味人の贅沢の極みだが、当時は風呂なしアパートが多かったし、家風呂に入れないなんて!という人が大半だったろうな。
だからここの住人は風呂はシャワーで十分、湯船に使ってる暇があったら持ち帰った仕事をしたいという人が多かったんだろう。
7.
この物件はもうオンボロな上、発癌性物質が使われてたり、雨漏りしたり、窓が開けられなかったり、エアコンが設置できなかったり、お湯も出ないときたら、立地しか魅力がないが、この物件じゃなくていいと思います!!!実質交換が難しいのにカプセルのデザインにして意味不明!!!
8.
中央区銀座にあるから「中銀」ね。
9.
この見出しの小さい写真で見たら古銭の包装パックに見えた。
10.
このアイデアを推し進めた新たなカプセルビルを作れば、単身者向けにヒットするかもな。
11.
香港裏通り。
12.
銀座に住んでます。
13.
単純に面白い
これを実際に作っちゃったのもスゴイ
当時のエネルギーを感じるね
住む人は修繕が大変そうだが
それも込みで楽しんでる感じ
14.
大阪万博のパビリオンで近未来の住居として夢を膨らませてくれたメタボリズムをカプセルホテルで具現化したもの。黒川紀章の名作。
空飛ぶ自動車が発明されるまで取り壊しちゃダメ
15.
このケンチクのオシャレ感を推す私こそオシャレな文化人です

という承認欲求をさりげなく醸し出そうとするアホな連中


スポンサーリンク


16.
大阪人なので
仕方がないと笑ってやってください
私マジで中国にある
銀色の高層ビルの記事だと思いました
17.
「太陽のほえろ」
18.
>ここにある家電はスマホ一台で対応できるんですよね。

そんなはずはない。スマホでインターネットとテレビは見られるけど、パソコン・テレビ・レコーダーは必要。無論、冷蔵庫・電子レンジ・掃除機の代わりにはならない

19.
コンセプトとしては現代でも十分通用すると思う。都心で仕事する一人暮らしで、家には寝に帰るだけって割り切るとスッゲー便利だぞコレ。
20.
正直、独房みたいな部屋ですね。精神的に無理です。換気もできないなんて、設計ミスとしか思えません。
21.
こんな汚い物件が800~1,000万円・・・お金持ち多いな。
22.
素晴らしいコンセプトの建物。
現代人が住むにはあまりにも不便だからカプセルの更新(交換)が必要なんだろう。
更新(交換)が出来ないなら、現代用のカプセルで近くに新築して欲しい。
23.
アスベストが剥がれ飛んでいるとか。。。
24.
1Rの画期的アイデアに思われてるけど、駄作だね。狭いっていうのは、どうしょうもないし、引越のたんびにカプセルごと移動、移動した人いるの?
25.
太陽のほえろw
26.
建物を表層的にしか捉えられない人、媒体(メディア)は「デザイン」という言葉を用いて、表現するが、そこに思想は含んだ言葉では無く、ただ形の事のみを言っている事が多い。
実際に、あの様な形になるには、思想が有り、その結果が現れ、目に見えているものとなる。
だから、安易に「デザイン」という言葉で片付けて欲しくない。
27.
首都直下で逝きそう。
28.
半世紀も前の建物に今の基準で指摘しすぎだと思うけど、スクラップアンドビルドの当初の時代に設備更新の発想なんてそもそもないし、耐震だって基準が古いわけでそこ指摘するのはずれてるかと。
建築業界ならだれでもしってるような、資格試験に暗記項目で出てくるレベルの建物だよこれ。否定する人多すぎな。
29.
大規模修繕がされていないのであれば、いつなにかしら事故が起きてもおかしくない状況だよね?(肝心な部分は補修はしているだろうけれども)
正直、現代建築って法隆寺とかと違って、デザイン画が残っていれば再建築できるのだから、コンセプトを生かして新しく作り直せばいいのにと思う。
黒川さんもカプセルを交換できる設計にしているのだから、新しいものをどんどん取り入れてほしいという願いもあったのでは?
30.
50年くらい前の高級マンションには、よくメイドルームとかが付いてた。3畳くらいの倉庫みたいのが。当時のハイソな層は、お手伝いさんを雇ってたからな。
飯田橋あたりに現存してて、今は事務所とかが多い。


スポンサーリンク