9月に千葉市美浜区の幕張メッセで開催された東京ゲームショウ2018は、過去最高となる29万8690人もの来場者を迎えて賑わった。今後の市場として注目されるVR(仮想現実)やAR(拡張現実)関連の出展を集めた「VR/ARコーナー」も大勢の観客を引きつけていたが、そこでは、仮想の遊園地に浸ることができる新しいVRアトラクションが登場して、普及への可能性をうかがわせていた。
■未来の体験の先取り「オルタランド」
控え室に入り荷物を預けて順番を待つ。呼び出されてからパソコンに身長を入力し、髪型や服装などを設定して自分のアバター(分身)をつくる。
そのままプレーエリアへと入るかというと、手前でVR用バックパックPCを背負い、VRヘッドセットを装着して手にコントローラーを持ったまま、何も見えない中をしばらく待つ。
「進んでください」という合図で足を進めると、VRヘッドセットの視界に青い空や平原があり、山がそびえ湖も見える広々とした空間が現れる。
以後、プレイヤーはその空間に置かれた幾つものVRアトラクションを、VRヘッドセットを装着したままで次から次へと試していく。
VR空間を遊園地にする-VRベンチャーとして、乗馬VR「ハシラスレース」や空間をブランコに乗って移動する「アーバン・コースター」などを送り出して来たハシラス(東京都中央区)が、
東京ゲームショウ2018に出展した「オルタランド」は、そんなコンセプトを持った新プロジェクトだ。これまでのVRが、アトラクションごとにVRヘッドセットを被り直していたのとは異なり、
「オルタランド」では、最初に装着すればあとはVR空間を移動しながら、置いてあるアトラクションを次々にプレーしていける。
「キックウェイ」というVRアトラクションでは、VR空間に見える装置のステップに立ち、下から伸びたハンドルを握ると、空中に伸びたレールの上をそのままの姿勢で進んでいくコースターが始まる。
「トロッコラン」では、トロッコに乗ってVR空間を移動していく。いずれも視界の動きに連動して足元の装置やトロッコが振動。風などの効果もあって進んでいる感じを味わえる。
土管から次々に飛び出して来るモグラをつかんでカゴに入れていく「mogura in VR」、回転する寿司から指定されたネタを掴んで口元へと運ぶ「SUSHI COASTER」などもプレーできる。
得点を競い合うようなVRアトラクションでは、同じVR空間でプレーしているメンバー間で声を掛け合い、参加メンバーを募ることができる。
時間が来ると終了となり、外へと案内されてVRヘッドセットを外すとそこは幕張メッセの一角。野原や山々が見えた世界ではなくなっている。
プレイステーションVRやOculus Goのように、家庭で手軽にVRのゲームや映像を楽しめる機器が登場しているが、ハシラスでは、施設型VRによる業界の牽引をビジョンに掲げ、
コンシューマー向けVRでは実現できない自由な発想のVRを送りだそうとしている。8月末に横浜市で開催されたゲーム開発者向け会議のCEDEC2018で安藤晃弘社長は、「施設型VRは儲からないと思われているが、
実はまだまだ期待されている領域が大きい」と指摘した。「開発されたソフトやハードは実用VRへと転用されていく。施設型の超凄い体験がVRの普及を促す。施設型VRは未来の体験の先取りだ」。そうした考えから投入したのが「オルタランド」だ。
施設型VRでは、「VRヘッドセットの着脱やチュートリアルに人手がかかる。同時プレー人数と同じくらいスタッフが常時必要」といった課題があるが、
「オルタランド」では1度VRヘッドセットを装着したら、そのまま幾つものVRアトラクションを連続して体験できるため、面倒を見るスタッフを最小限に抑えられる。ずっとVR空間にいるため、機材や空間を飾り立てる必要もない。
VR空間に浸る楽しみを拡大しつつ、コストや運営の面にも配慮した施設型VRの形として、各所に導入を働きかけていく。
引用元: https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181007-00000501-fsi-bus_all
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