家事や育児がずっと嫌いだった。離婚して一人で実家に帰ったおかげで、子どもの世話は元夫がするし、家事は母親が全部やってくれる。やっと家事・育児から解放された。離婚してよかった――。「女性の自由と孤独」をテーマに、女装する小説家・仙田学がさまざまな女性にインタビューするこの連載。今回は、離婚を選択して家事・育児から自由になったノリコ(42)の話を聞く。(仙田学)
娘を残して家を出たノリコ
「離婚する直前は、完全にうつ状態になってたよ。1年悩んだけど。いま思うと人生のどん底やった」クリームソーダに浮かんだ氷をストローでかきまわしながら、ノリコは笑った。その笑顔は小学生のようにあけっぴろげで、でもどこか頼りない。
「離婚したいって言って、離婚届を置いて出ていったんよ。中学生の娘も置いてった。その頃はもう、家の中にいても娘と会話はなくて、LINEでやりとりしてたわ。まわりからは、娘捨てたって責められた。でもな、自分がしっかりしてないと子育てなんてでけへん。娘は娘で『母なんていらんよ』ってゆうとった。私がいなくなったらやってけんのかって気持ちもあったよ」
離婚時に最大の焦点となりやすいのが、子どもの親権をどちらが持つかということだろう。夫婦間で話がもつれて調停や裁判となった場合、日本では圧倒的に母親が親権を持つことが多いとされている。父親に親権がいくことは珍しいのではないだろうか。
「元夫がなんで娘を引き取ったのかというと、娘を人質にして私に戻ってきてほしかったんやと思う。ただ元夫は、ちゃんと子育てしてる様子がなくてね。
娘はずっと放任されてご飯もひとりで食べてたみたいで、すごく痩せちゃったんよ。来年から高校生なんやけど、生気が感じられへんっていうか、寂しそうやし」
離婚時に元夫に引き取られた娘とは月に1度の面会を続けている。もし娘が一緒に暮らしたいと言いだしたときには「受け入れる準備はできている」と、ノリコは言う。娘から言いだすのを待っているのだと。
ノリコと娘の関係に、私は言い知れない違和感を覚えた。実の親子らしくない距離感を感じるのだ。その一方で、娘への愛情はひしひしと伝わってくる。
「そう言われると、私とお母さんのこと言われてるみたい。あんまり嬉しくないけど」
笑顔を残したまま、ノリコは声のトーンを落とした。
引用元: https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181027-00010001-danro-life
ネットの反応